相続・事業承継コラム - 2012-12-17

成年後見人について考える。川庄ジャーナルNo89①

Posted by 川庄 康夫
Yasuo Kawasho

成年後見人の制度について、2回に分けてお伝えします。

 

1.急速な高齢化の進展

今年は戦後生まれの団塊の世代1期生が、65歳となり前期高齢者の仲間入りをしました。さらに、今後2年ほどのうちに約800万人の人たちが65歳を迎えることになります。ここ数年のうちに前期高齢者となった人たちは、今後10年の後には75歳の後期高齢者となるわけです。

 

65歳では多少の物忘れはあっても、認知症の症状がある方は少ないのですが、75歳を超えるとひどい物忘れが発生したり、経度の認知症が出る方が増えてきます。認知症になると遺言書も書けず、またその効力もありません。また、老人の判断能力が低下したところにつけいるような商売も多く巷にあふれています。

 

かく言う私の別居していた父親も、人に騙されて(?)高額の布団やマッサージ機械を購入したりしていました。何で購入したのかと聞くと、「体に良いと言われ、健康に気をつけなければいけないと思うので購入した」と言っていました。年寄りに何十万円もするものを売りつけるのは問題ではないかと思いましたが・・・。

 

先祖代々の資産を守っていくために、また自分の意に添わない相続を避けるためにも、「相続はずっと先。自分は(私の両親は)まだ大丈夫」と思っているうちに成年後見人について知識を持っておくことをお勧めします。

 

成年後見人は、両親と離れて暮らしている場合や、両親の認知の度合いが進行している場合、または高額な物品の購入を防ぎたいなどの法律行為に関して、両親が人に騙されないようにしたい時に有効に使える制度です。

 

2.成年後見制度の意義

成年後見制度とは精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害等)のために判断能力が不十分となり、契約など法律行為の意思決定が困難となった人の能力を補う制度です。本人を代理して、法律行為を行う事務ですから、身の回りの世話をする身体介護などは含まれません。

 

成年後見人制度の利用によって後見人が代理で行うことができる法律行為は、財産管理(預貯金の管理、払い戻し、公共料金の支払、年金の受取、不動産の売買、賃貸借契約など重要な財産の管理、処分、遺産分割、相続の承認、放棄など相続に関する財産の処分等)と身上監護(日常生活や病院などでの療養看護に関わる法律行為で日用品の買い物、介護サービスの利用契約、要介護認定の申請、福祉関係施設への入所契約や医療契約、病院への入院契約等)から成り立っています。

 

3.法定後見制度と任意後見制度の違い

成年後見人には、法定後見と任意後見の2つがあります。法定後見は、認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が既に低下しているか他の権利擁護のために、家庭裁判所が後見等の開始とともに後見人を決定するというものです。

 

任意後見は判断能力に問題のない方が、将来判断能力が低下した際に任意後見人となる方(任意後見受任者)と依頼する代理権の内容を決め、公証人役場で契約するというもので、一般的にはこの任意後見が多数を占めています。  

 

後見人は、誰でもなる事ができます。配偶者、親族等でもなることができますが、本人の生活を最も理解している人を後見人等とするのが良いと思われます。誰でも後見人になれますので、子供兄弟姉妹、甥姪等の親族の外に専門職(弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、行政書士等)が本人の状況に応じて選任されます。そのため身上監護を親族の後見人にしたり、財産管理を専門職に委ねたりする事例もあります。 

 

4.成年後見人の行う財産管理業務

成年後見人の行う業務には、以下の事項があります。

①重要な証書の保管と各種手続(銀行等預貯金通帳等)

②年金・賃料その他の収入の受領や管理

③金融機関とのすべての取引(ただし運用は除く)

④必要な費用の支払等

⑤居住用不動産の維持・管理

⑥日常生活での金銭管理(病院・施設へは預託金にて管理)

⑦寺社等への贈与(本人が行っていた寄付、寄進等の継続)

⑧本人に必要な衣類や生活用具の購入

⑨その他の財産の維持・管理・処分

 

次回は、任意後見の具体的な手続等についてお伝えします。

 

川庄会計グループ 代表 公認会計士・税理士 川庄 康夫

Posted by Yasuo Kawasho
代表取締役 川庄 康夫

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