Posted by | 川庄 康夫 Yasuo Kawasho |
1.自民党政権復帰
昨年12月16日の衆議院の総選挙で、自由民主党が過半数の議席を獲得し、自民党首相の安倍晋三氏が首相に選任されました。
安倍首相は、デフレ状態が続く我国経済に、「物価上昇目標2%アップ」を掲げ、経済対策を最優先課題とすることを発表しました。我国の20年間は慢性的なデフレ状態で、物価は下落し、賃金も上がらず、国民総生産(GDP)もマイナスか続き、世界から「失われた20年」と揶揄されているほどです。
安倍首相は、このデフレ脱却のために「日銀と政策協定を結ぶことを念頭に置き、もし日銀が従わないような事態になれば日銀法を改定してでも、デフレ脱却を目指す」との強い意志を表明しました。株式市場は、自民党政権誕生と安倍首相の強い意志を受けて大幅に上昇しています。
今後我国の経済は、上向きになるとの予想と、円安誘導を行うであろうとの予測から円高から円安へのトレンドとなり、対ドルの為替は79円から88円程へと安くなりましたし、株式も輸出関連銘柄から順に上昇しているような状況です。
しかし、安倍首相のなすべきことは、まず最優先で経済対策であり、決して物価上昇率を2%にすることではありません。
そもそも物価を2%アップとすることはそんなに難しいことではないのです。今の経済状況下では流れは円安ですから、輸入品が必然的に値上がりします。原油の価格は上昇すると思われるし、小麦大豆等の食料品や飼料も、今後は価格が上昇すると思われます。
このような輸入品を通して国内物価が輸入インフレとなり、価格(物価)上昇がおこることは想像に難くありません。できるかどうかはわかりませんが、インフラ整備にかこつけて社会資本関係(水道、交通費、医療、介護、電気、通行費等)の値段をアップすれば物価は全体的にアップし2%の物価上昇は達成できると思います。しかし、今のこの状態での物価上昇は、不景気下での物価上昇となり、生活は一層厳しい状態となる可能性があります。
2.成長軌道となるために
経済成長するためには、国民支出が増加しなければなりません。国民支出を分析すると消費支出(55%)設備投資(20%)公共投資(20%)純輸出(=輸出-輸入)(5%)に分類されます。息の長い景気上昇トレンドになるには消費支出に火がつかなければなりません。政府は今後10年に渡って100兆~200兆円の公共投資があるだろうと予測しています。
機関車役の公共投資が、景気を上向きに、設備投資を増大方向に牽引します。そうして輸出が増加し、最終的に消費支出の拡大に繋がっていき、長期の景気上昇となり、我国の雇用が拡大するであろうことを望んでいるわけです。ですが、そう簡単に物事は運ばないだろうとの思いもあります。
現在我国の需給ギャップは40兆円といわれています。あまりに大きすぎるギャップに少々の公共投資では景気上昇に火はつきそうにありません。為替は円安になりましたので、輸出は増加しやすい傾向です。その流れが前述したような消費支出の拡大に繋がり景気が良くなるといいな、との思いはあります。ですが肝心の輸出先である、中国・アセアン諸国は景気減速に見舞われています。又ユーロ諸国、特に南欧諸国は信用不安に苛まれています。このような状況を考えると、どんどん輸出が増加していく、というのもなかなかに困難なことであるといわざるを得ません。
現在の我国の財政状態は、92兆円の一般会計予算に対し税収42兆円という状態で、予算の不足は国債の発行で賄っている、いわゆる借金状態にあります。我国の国債残高は709兆円であり、地方債も合わせると1000兆円の借金状態です。本格的に景気が良くなるとしても、国債発行残高は増加し続けることが予想されます。現在の状態が続けば近未来には国債発行残高は1000兆円を超えるでしょう。その時には日本国債のデフォルトも考えておかなければいけないかもしれません。
ヘッジファンドは、15年ほど前から我国の国債は暴落するものと考え、日本国債に売りを仕掛け15年間失敗の連続でしたが、今後は必ず勝てると語っています。ファンドの人たちは、国債金利が1.8%~3%になった時に大儲けができると話をしていました。国債の金利が上昇する時、即ち1.5%→1.8%と上昇する時は注意深く様子を見ておく必要があるでしょう。金利の上昇が始まったら、短期間で3%程度までは上がってしまうと思われます。そのときは超インフレになるかもしれません。
しかし、くよくよ考えてもしかたありません。なるようにしかなりません。今までの15年間、国債のデフォルトはなかったし、国債もまだ国内での消化が可能な状態であると思われます。すぐにデフォルトはないでしょうが、いろいろなケースを考えて状況把握をきちんとしておくことが肝要です。インフレ期待と為替が円安になったため、金価格は上昇しています。インフレヘッジのためにもまだ金の購入は一考の価値があるものと思われます。
3.これからの税と経済予測
平成25年1月から復興特別所得税が、今後25年間に渡って2.1%課税されることになりました。今は、景気はよくありません。前年比で給与は減少しています。下がり続けているわけです。このような状況で課税強化をすることは、(安倍首相が言うところの「景気が良くなって消費税の増税を計る」という話と税金種類は異なりますが・・。)景気にはマイナスとなるでしょう。消費者は手取りが減るので消費支出にまわす余力がなくなるのではないのでしょうか。
所得税の最高税率もアップが予想されます。公明党は選挙公約で所得税率アップ5%を記載していました。現在40%の所得税率を45%にし、住民税と合わせて55%にするというのです。アメリカでの財政の崖の話が話題になっていましたが、アメリカの所得税率がアップするとアメリカ国内の景気が悪化し、世界景気に多大な悪影響を与えるからということで、与野党協議がなされていたことを思い出してください。税率のアップは景気回復にはマイナスに働くのです。
相続税の課税最低限の引き下げと最高税率のアップも決定されそうでした。(平成27年1月から実施の予定でしたが現在もまだ決定していません)相続税も「国民に広く薄く負担してもらうため」と基礎控除も従来の60%(配偶者と子供2人の標準家庭では現在8000万円の基礎控除が4800万円になります)になり、相続税は一般の家庭にもぐっと身近なものになりつつあります。
4.ますます重要になる経営計画書の策定
消費税は平成26年4月に8%、翌平成27年10月に10%へと増税が決まっています。ただし、経済成長率名目上3%、実質2%を条件としており、橋本政権下で行われたような不況下での税率アップとならないようにと願うばかりです。
消費税率が、5%から10%へアップすると、利益率が低い事業者は消費税を支払うことができなくなります。今後事業を行っていく上では、消費税を支払えるように利益率を確保するようにしなければなりません。何度もくり返し言っていますが、これから先継続して安定的に事業を行っていくために、経営計画書の策定は必須です。経営計画を立て、予算と実績を対比し、企業の存続を計りましょう。当事務所では経営計画の立案のお手伝いと予実対比のお手伝いをしています。お気軽にご相談下さい。
川庄会計グループ 代表 公認会計士 川庄 康夫
Posted by Yasuo Kawasho
代表取締役 川庄 康夫
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