労働基準監督署の「臨検」(企業への立ち入り調査)についてのご質問が増えています。
「どうしてうちに来たんでしょうか?」
「何を調べたいのでしょうか?」などなど。
「臨検」には大きく分けて4種類あります。
①厚労省の行政方針に基づき、定期的に行うもの(定期監督)
②従業員(もしくは退職者)の申告によって行うもの(申告監督)=「駆け込み」と言われるもの
③災害時に行うもの(災害時監督)
④是正勧告を行った企業を再調査するもの(再監督)
①の定期監督は、厚労省の行政方針に基づくわけですが、実際には各労基署が業種やテーマ等を絞り込んで行われます。
業界では、長時間労働(過重労働)が予測される業種(建設、運送、サービス業など)が狙われやすいという説もあります。
②の申告監督については、最近では、従業員本人のみならず、その家族や友人、恋人などからの「申告」も増えています。
労基署としては、たとえ申告者が匿名であっても、その内容に違法性を認識した場合は、基本的に何らかの動きを起こします。
この時に、①の定期監督の形を見せることもあるため、企業としては①なのか②なのかがわからないのが現状です。
一説によると(全部に当てはまることではないのですが)、労基署から提出を求められた資料が、直近の2~3ヶ月であれば、①定期監督であることが多く、1~2年ほどであれば、②の申告監督であることが多い、とも言われます。
※賃金債権の時効2年であるため、「2年分」と言われたらおそらく申告による不払い給与の件だと考えられます。
ちなみに、労働基準監督署の「署」は、警察署の「署」の字と同じ。書類送検することもできるのです。(労働基準監督官は、特別司法警察官の身分を持つ行政官です。)
よって、労基署の指導・勧告を無視する行為は、「悪質」と判断され、企業側が不利になる一方ですのでこうした調査にはきちんと対応するようにしましょう。
なお、労基署にも「件数ノルマ」があるという話もあり、万全な対抗策を持つ大企業を狙うより、(きちんとした労務担当者を置かない)中小企業を狙うほうが断然効率がよい、と考えられているともいわれます。
「うちは中小企業だから、法律やら守れんもんね...」
と言っていられる時代は、終わったのかもしれません。
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川庄会計グループ ㈱KS人事研究所 社会保険労務士 高田典子
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