Posted by | 川庄 康夫 Yasuo Kawasho |
Ⅰ意義
辞書で傲慢を引くと、「驕り高ぶり 周囲を見下す態度をさす」とあります。昔から、この「驕り」の代表例として、「驕る平家も久しからず・・」と戒められてきました。「自信」や「誇り」と「驕り」には紙一重の要素しかないようですが、その間には深くて暗い川があります。「自信」や「誇り」をもってことに臨むことと、「驕り」の気持ちを持って臨むことは、"似て非なるもの"であることを認識しておかなければなりません。
企業も「驕り」の態度で企業運営を行うと手痛いしっぺ返しを受けることになります。では、どうしたら成功するのか?どのような考え方で企業経営を行えば良いのかを考えても、簡単に答えは見つかりませんので、いろいろな会社の失敗例や、他社が成功している事例を検証し、参考として自社に取り入れて検討します。経営が悪化しても誰も助けてはくれません。自社で経営改善を行って企業価値を上げ、エクセレントカンパニーにならなくてはなりません。
Ⅱ事例の検証
(1)「技術がよければ必ず売れる」という過信
今から30年ほど前に、世界を二分する競争を繰り広げていたベータ陣営のソニーと、VHS陣営のナショナル(現パナソニック)・ビクター・日立等はどちらが世界市場を押さえるかを争っていました。ソニーのベータとパナソニックのVHS。録画機は、技術的にソニーのベータの方が録画の画質や操作性も優れていました。その為、ソニーは技術的優位な立場にあり、世界市場は遠からず、ソニーのベータが世界標準になってVHSを世の中から駆逐してしまうだろうと楽観していました。何しろ「技術のソニー」でしたから。
対するVHS陣営のビクター・パナソニックは世界戦略として、北米を取り込むと他の地域は自動的にこちら側の陣営になる読んで、ソニーよりも早く北米市場を押さえてしまいました。ソニーが気づいた時には北米はVHS一色になっていて、技術的に優れていたベータ陣営は敗戦を余儀なくされます。「技術がよければ必ず相手に勝てる」「負ける訳はない」との技術過信という「驕り」から、ベータは市場から消えて復活の目を見ることはありませんでした。
技術が良いのならなおさら製品の価値にのめり込むことなく、その製品の売り方は現状で良いのか、又どこの国のどの相手を自社側につけるとシェアを一挙に拡大できるか等を「驕る」ことなく、ソニー陣営の方から相手を立てて寄っていけば違った状況になったかもしれません。当時のソニーの経営陣に、「ソニー製品は技術的には世界最高峰だが、販売は大丈夫か?もっと売り方・攻め方に工夫があってもよいのではないか?」と、経営にあたって常に自信を持って、そして臆病な心を持って経営に臨む人がいなかったのか、もしくはそのような人がいたとしてもそういう発言の機会がなかったとしか思えません。
あんなにりっぱなエクセレントカンパニーのソニーですから、その後驕らず、謙虚な気持ちを持った経営を続けていくものと信じていましたが、最近ソニーは14年3月期の連結決算で純損益1100億円の赤字になると発表しました。対策として不振がつづくテレビ事業の分社化やパソコン事業の売却などで経営再建をはかり、それに伴い国内外で約5000人の人員を削減すると発表しました。
他企業の14年3学期の決算予想を見ると、円安に伴って利益が嵩上げされリーマンショック以前も含めて、過去最高の利益を計上している企業が多数あります。一昨年から続いているアベノミクスによる金融政策でのマネタリーバランス増加に伴う超金融緩和の円安効果により、企業の予想利益は大幅な上昇となった企業が続出しました。
ソニーの決算予想を見ると、ソニーは円安という条件下でも製品が売れなかったと思われます。同業他社と比較しても、円安でも製品が売れなかった訳ですから、原因としては「自社製品やサービスが消費者のニーズと合致しなかった」ということでしょう。世界規模で市場構造が変わり、情報・通信インフラが刷新されているなか、ソニーは主力のエレクトロニクス分野で、その変化した市場への対応ができたのか?ということが問題であり、利益が出ないということを、技術者や従業員の首を切ることで誤魔化しているのではないでしょうか?
(2)勝ったと思ったら負ける。それからの復活
シャープ㈱の業績は円安の効果もあり営業赤字の予想から営業黒字200億円へと変化すると発表し、長く続いた営業赤字から決別しました。シャープの経営悪化の原因はいろいろありますが、そのうちのひとつに必ず挙げられるのは液晶の大型工場の建設です。「アクオス」ブランドの液晶テレビが大ヒットし、その勢いに乗って技術流出を防ぎ、一強独裁を目指して亀山モデルと言われる亀山工場の拡張や堺工場の新設に走ったのが、結果的に過剰投資となりました。
問題を解く鍵はシャープの経営幹部がパナソニックやソニーに「勝った」と思ったところにあります。国内市場では優位に立っていたので、一挙に他社を引き離そうと大型投資を行ったと思われます。
しかし目を世界に向ければ、韓国勢や台湾勢の存在があり、グローバル市場で勝っていたわけではなかったのです。技術面で見ると、テレビのデジタル化で部品を共通のモジュールとして作ることが可能になり、量産による大幅なコストダウンを容易にしました。販売面では新興国が巨大市場になり始めていて、こうした新たな変化は韓国勢や台湾勢に有利に働きました。
その時々の経営の判断を、振り返ってみて安易に判断するのは良くないとは思いますが、そんなタイミングでの大型投資は、今から振り返れば無理がありました。市場をグローバルに判断しなければならない状況も考えて、経営の舵取りをしなければいけません。
バブルの時代もそうであったように、日本企業が"勝った"と感じた時が凋落のはじまりだったのです。製品や技術で成功しても、驕らず謙虚な気持ちで「勝って兜の緒を締める」などの気概を持ち、常に挑戦者であると思い「追いつき追い越せ」と社内号令をかけ、世の中の情報をキャッチし、設備投資・人材教育・情報投資等を行えば、失敗はしないと思います。
川庄会計グループ 代表 公認会計士 川庄 康夫
Posted by Yasuo Kawasho
代表取締役 川庄 康夫
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