Posted by | 川庄 康夫 Yasuo Kawasho |
1. アベノミクスへの期待
アベノミクスは「3本の矢」から成り立っています。1本目は積極的な金融緩和政策です。黒田日銀総裁の登場により、円安株高に移行しています。黒田日銀総裁のやり方をいろいろ批判する人もいますが、過去20年以上にわたって続いている我国のデフレ状況と、企業収益の低下による雇用の縮小等の閉塞感を打破するという面では一応成功を収めつつあると思われます。
日銀は、現在130兆円のマネタリーベースを160兆円から170兆円に増加させ、市場から積極的に国債・リート債券・社債券等を購入し、市場に溢れるほどの資金の供給を行い、多額の国債を発行しています。その結果、市場に潤沢な資金が供給されるようになります。貨幣価値の値下りを懸念する声が上がり、お金よりも物に換えた方が良いとの期待感で株式・その他の投資にお金が流れ、めぐりめぐってデフレから脱却、その結果2年間で2%程度の物価上昇をするというシナリオです。
金融政策だけで景気が良くなり、デフレからインフレに変わるわけではありませんが、20年超にわたるデフレからの脱出の道筋としては一理あると思います。今迄の自公政権・民主党政権もデフレからの脱出はできませんでしたが、今回の自民党政権になってから、為替は1ドル80円から100円と25%の円安になったので、輸出企業の採算がよくなり増収増益企業が増えてきました。その一方、輸入型企業は、円安に伴う輸入コストの上昇により採算が悪化し、製品価格に転化し小麦・油・食料品等が値上がりしています。
物の値段(価格)は需要と供給で決まります。国債の価格も「金利」という尺度の調整によって決まります。通常多額の国債を発行すると、国債の金利は上昇します。0.3%前後の国債金利が1%、2%、3%と上がっていくと、1000兆円程発行されている国債の利払いだけで国家予算が組めなくなり国家財政が破綻することになります。金利は上がり始めるとすぐに1~2%は上がってしまいます。金利が上がり始めると日銀は多額の国債を購入し、金利の引き下げを行います。最近では0.3%の金利が1%近くにまで上昇したときに、日銀は国債を吸い上げました。その結果、金利は低下へと動き、日銀の思惑は成功しました。「国債の大量発行により国債の金利が上昇することになれば、日銀が国債を購入するので、金利が上昇することはない。」と言っていたそのとおりとなり、まずは一安心です。現在のところアベノミクス1本目の矢は成功していると思われます。
2本目の矢は機能的な財政政策です。国土強靭化計画に基づいて、政府が財政支出を増やすことです。その額は総額200兆円規模とも言われています。民主党が掲げた「コンクリートから人へ」という名の単なるバラマキから見れば少しは良いことかもしれません。政府支出が呼び水となり、民間の設備投資へと繋がり、最終的に消費支出の拡大を誘い、長期的な景気上昇になると物価も2%程度はアップするでしょう。また賃金も2%以上のアップが見込まれることになると思われます。高額商品も売れ始め個人消費の動きに伴って企業の設備投資にも徐々に明るさが見え始めていているようです。設備投資の先行指標である機械受注の推移を見ると、少しずつ企業の設備投資が出始めているのが読み取れます。本格的な設備投資が行われると、息の長い好景気の循環になるものと見込まれます。
2. 国債は大丈夫か?
我国は2020年にプライマリーバランス(基本的財政収支)の赤字を解消し、黒字化を達成することを公表しています。プライマリーバランスが黒字化するので、我国国債の暴落はありません。その論理に基づいて政府は「国債は購入しても大丈夫!」と個人向け国債購入のテレビコマーシャルを2010年頃から始めました。政府が宣伝し始めると、本当に大丈夫かな、と思ったりします。以前、国民年金を「100年安心年金です。」とPRしたところ、反対に国民年金の未納付が増加してしましました。政府は10年程前から、基礎年金の上乗せ部分である国民年金基金の加入を勧めていますが、その一方で、厚生年金基金は今後10年以内に90%程度が廃止になりそうです。国民年金基金は大丈夫かなと思われてなりません。何となくですが、「政府は状況が厳しくなり、そうなった場合を見据えて、先手を打ってPRしている?」としたら、いま個人向け国債の購入をPRしているのは将来・・・?と思うのは間違いですかね?
我国の財政支出を均衡させなければ外国の信認を受けるとこはできません。しかし、国土強靭化計画で財政支出は決まっていますので、残るは増税だけです。平成27年より相続税、所得税は税率が5%アップすることが決まっています。消費税については、今年の秋に景気の動向を見て判断することになっていますが、予定通り3%アップするものと思われます。
今後は外国に我国の国債を購入してもらわなければ、国債の消化は難しい状況になると思います。そのためにも、対外的には、我国の財政に対する信認を受け易いと思えることが重要です。現在我国の国債はすべての国民が購入しています。どういうことか。それは、日本の金融機関がそれを購入しているからです。銀行・公的年金・ゆうちょ銀行・簡易保険・生損保問うが主な購入先だからです。私たちは金融機関を介して間接的に日本国債を購入しているというわけです。銀行の貸出額は20年前から徐々に下がってきています。銀行は貸出先がないので運用収益を上げるために国債を購入している、とも考えられますが、財務省から各金融機関に国債の購入が割り当てられます。即ちノルマがあるのです。こうした金融機関は預っている個人や法人の金融資産を日本国債の購入に向けています。ここに、2012年末で1547兆円という日本の個人金融資産が日本国債と関係してきます。このような状況が続くと日銀が買い支えない限り国債暴落と金利急騰が起きるリスクが高まります。2013年4月5日に国債先物価格が一時的に暴落し、国債金利が1%に近づきました。このとき日銀は多額の国債を購入し、国債の暴落を食い止めました。
現在約1500兆円ほどの国民金融資産があるので、国債は1000兆円発行しても大丈夫だとは思いますが、団塊の世代が10年後には後期高齢者となり、第3号被保険者も含めた年金の支払の増加と、医療費の支払増加・高齢者の貯蓄の取り崩しにより国民金融資産は減少・国債が増加することになり、国債の消化が困難になることが予想されます。国債を諸外国に売却しなくても(購入する人がいない)日銀が国債の引き受け手になれば、国債の消化は進むので問題にはならないと考えるのではなく、将来のハイパーインフレーションの可能性を考えておくべきでしょう。
3. 対応策
ハイパーインフレーションになると、貨幣価値は低下し、40年ほど前のブラジルのように、りんご一個を買うのに鞄いっぱいの札束が必要になったりします。貨幣の価値が下がるのですから、貨幣を持つのではなく貨幣以外の資産を購入することがその対策となります。
①金・商品・不動産(良いもの)等の実物資産
②国債優良株を購入する
などがその代表例となりますが、国債の暴落はすぐにはやってきませんので、時間を掛けて(5年~10年)じっくりと研究することも良いのではないかと思います。
川庄会計グループ 代表 公認会計士 川庄 康夫
Posted by Yasuo Kawasho
代表取締役 川庄 康夫
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