相続・事業承継コラム - 2014-07-18

相続で揉めないためには? 2/2

Posted by 川庄 康夫
Yasuo Kawasho

2. 相続によって仲の良い兄弟間の争いが起こる?

 

 

相続の際に遺産分割の話し合いがつかず、家庭裁判所の相続相談を利用した件数は、1996年は6万件程でしたが最近は20万件を突破していて1996年の4倍近くになっています。この数字は家庭裁判所に相談に行った件数ですから、相続に関して家族がもめた件数はこれの数倍に達すると考えられます。

 

 川庄グループでは6年程前に「福岡相続相談センター」を立ち上げて、ホームページからのお問い合わせや、フリーダイヤルでの電話対応等を行ってきましたが、この1年程前から月に20件~30件の相談が来るようになりました。

 

私も相続に関して揉め事の相談にのるケースが多くなったような気がします。仲の良かった兄弟が、相続で気まずくなったり、疎遠になったりするケースを見ると事前によくお互いを理解し"争続"を防ぐようにしなければと思います。

 

 みなさんは、「資産が多いから揉めるのだ。うちは揉めるほどの資産がないからだ丈夫」と言われますが、原則どこの家庭でも揉めると思って対処することをお勧めします。

 

 

こういった揉め事増加の背景には、戦前の長子相続制度の廃止に伴い、各相続人が平等に相続する権利を得たことと、分割しにくい財産だけが残る家庭が増えたことにあると思います。相続財産が全て現預金であれば、揉めることもないと思いますが、居住用の自宅だけだと分けようにも分けることができません。

 

私は、不動産の相続において相続人の共有にすることは基本的には反対です。共有にするのはそう遠くない時に売却し分配する場合だけです。不動産を共有にすると、将来賃貸したり売買する時にお互いの了解が必要となります。すぐに売買する場合はともかく、数世代後で売買する時は、その所有者を探し出し、全員の同意をもらうことは至難の業です。その為、分けにくい財産をお持ちの方、兄弟末永く仲良くしてほしい方は、その対策が必要となります。

 

(1) 兄弟姉妹間で発生した揉めごとを解決した例

 

   6年程前に父親が亡くなって、相続人は母親、長男、次男、長女の4人でした。生前から、父親母親ともに子供たちには、「兄弟仲良くしなければいけません。又先祖を大切にお祭りしてゆくように」と言って聞かせていました。そのこともあって、生前から親子兄弟間の仲は非常に良いものでした。

 

   一次相続の時は長男が主体となって遺産分割を行いました。当時から相続税法改正の概要の話は出ていましたが、長男は「財産を所有している母親は、子供達から大切にされるだろう」との思いから、全ての財産を母親のものとしました。

 

当時は自宅不動産・自用地・貸家5軒・現金預金約400万円、借入金1,000万円程でした。この時は約9,000万円の相続財産でした。借入金1,000万円の返済が少し重く感じたのと、貸家自体も30年経過して耐用年数を超えていたので、貸家を1軒売却し借入金の返済を行いました。

 

その後平成25年12月初旬に母親が亡くなり相続が発生しました。4ヶ月後の準確定申告も終了し、また相続税の申告迄は時間もありますが、相続財産が8,000万円超えそうだからいくらの財産があるのか会計事務所に計算してもらうと8,000万円超の財産となりました。又特例措置(小規模宅地等)債務、葬式費用等を考慮すると7,800万円程となり相続税の申告はしなければいけませんが課税はない状態となりました。

 

公正証書遺言等はありませんでしたが、「私の財産は、兄弟仲良く分けなさい。」と母親は兄弟で揉めることはないと信じて他界しました。前回と同じように、長男が遺言執行の取りまとめを行いました。

 

母親の財産のうち、貸家4軒を長女に、自用地は次男へ、自宅は長男に分けることにするとほぼ各自1/3の財産取得となるので、皆納得するだろうと思っていました。

 

そこで、三人一緒に話し合いをしたいと思いましたが、全員(3人)集まったところで分割の話をして、もし揉めたりすればまとまる話もまとまらなくなると思い、一人ずつ各自の希望を聞くことにされました。

 

まず、次男と話し合うことにしたのですが、次男は過去の妹の話を持ち出し、「母親に対して失礼なことを言ったのでその分割には納得がいかない。貸家4軒すべてを妹が取得するなら、自分はそのうちの1つの場所(指定あり)を相続したい。もし貸家をもらえなければ分割には反対だ。」と主張されました。未分割のままでは相続税の納税も発生するし時間もかかるので、長男は次男に、指定した不動産を取得するのではなく長女が指定する不動産を取得すること、また不動産を取得するからその代わりとしてお金を長女へ渡すように提案しました。

 

次男「いくら払うの?」

 

長男「500万円まで・・かな?」

 大まかな金額を次男に提示して、次に長女のところに行きました。

 

長男「貸家4軒取得ではまとまりそうにない。3軒の取得ではどうか?ただし代わりにお金をもらうのでそれでどうだ。」

 

長女「いくら?」

 

長男「300万円前後かな?貸家は古くて手を入れないといけないからお金があれば便利だろう。もらう金額は自分で考えて皆で集まった時に言いなさい。又次男へ渡す貸家の1軒は4軒のうちから自分で貸家をよく見てきて決めるように。」

 

長女「わかりました」

 

数日後、次男宅で分割の話し合いを行いました。

長女は自分の好みでない貸家を提示し「お金は250万円ほしい。」と要求し、次男は示された金額が300万円よりも安かったこともあり、お互いに当初の目的は達したので、この分割で2人共承諾しました。これで遺産の分割は無事終了しました。

 

長男は各自の要望をよく聞き、個別交渉などの根回しを行い、その後一同に会して一気に交渉を進めたのが良かったようだと言っていました。各自の要望を聞き出しているときにもただ聞くのではなく、譲歩できる余地の有無を考えながら、お互いの落としどころを誘導したことも争いを防いだ大きな要因だったと思います。

 

福岡相続相談センターでは相続税申告だけではなく、相続発生前の事前相談・遺言執行人・後見人等の対策などのご相談を承っております。詳しくは担当者へお尋ねください。

 

 

川庄会計グループ 代表 公認会計士 川庄 康夫

Posted by Yasuo Kawasho
代表取締役 川庄 康夫

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