節税対策 - 2023-06-16

海外取引に関するインボイスの影響

令和510月からインボイス制度が開始されます。すでにインボイス制度の対応策を検討されている会社も少なくないでしょう。

今回は、国内ではなく、海外取引についてインボイスの影響があるかどうか説明します。

消費税の課税対象としては、①国内取引であること、②事業者が事業として行うものであること、③対価を得て行うものであること、④資産の譲渡・貸付、役務の提供であること、これらの要件を満たすと、課税取引として認識されます。反対に、この要件を満たさないものは不課税取引として扱われ、例えば国外での取引は不課税取引となります。

この課税取引の中で、国内において非居住者に対して取引を行った場合には、免税取引として取り扱われます。つまり、海外取引という意味では、不課税取引と免税取引が関係してくるわけです。

インボイス制度は国内取引に焦点を当てているため、不課税取引に該当すれば影響ありません。しかし免税取引の場合には、一定の取引においては影響がでてきます。

原則的には、輸出免税に該当すればそもそも売手(輸出側)は買手に消費税を請求しないので、インボイス制度が導入されても、売手にインボイスの交付義務は生じません。インボイスの交付義務を規定している「新消費税法第57条の41項」が、次のように定めています。

 

適格請求書発行事業者は、(a)国内において(b)課税資産の譲渡等(c)7条第1項、第8条第1項・・・の規定により消費税が免除されるものを除く。・・・)を行った場合・・・において、当該課税資産の譲渡等を受ける(d)他の事業者(第9条第1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。・・・)から・・・求められた時は、・・・適格請求書を・・・交付しなければならない。

 

上記(a)(d)で記載があるように、次の場合にはインボイスを交付する義務がないことが読み取られます。

(a) 国外取引(不課税)である場合

(b) 非課税資産の譲渡等である場合

(c) 輸出免税(消法7①)や免税店での輸出物品の譲渡(消法8①)に該当する場合

(d) 譲渡の相手が消費者や免税事業者(消法9①)である場合

 

しかし、輸出免税のうち、非居住者に対する役務の提供であっても輸出免税が適用できない場合があります。それは、①その非居住者が日本に事務所等を持っていた場合、②提供する役務の便益の享受が国内で完結する場合です。例えば、国内に所在する資産の運送や保管、国内における宿泊や飲食が挙げられます。この場合は輸出免税とはなりませんので、売り手としてはインボイスの交付義務が生じます。

 

また、インボイス制度は電気利用通信利用役務の提供(リバースチャージ方式)にも影響します。

事業者向け電気通信利用役務の提供に関する取引については、これまでと同様に役務提供を受けた者において申告・納付が必要となります。一方、消費者向け電気通信利用役務の提供については、インボイス制度開始とあわせて登録国外事業者という制度が廃止されますので、インボイス制度の登録を受けた事業者が発行する適格請求書のみが仕入税額控除の対象となります。

 

このように国内のみならず、海外取引においてもインボイス制度の影響が出てきますので、ご自身の会社の取引を再度見直す必要がありますね。

 

 

 

川庄公認会計士事務所

嶋村


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