もしも赤字が出たとしても、翌年度以降に引き継ぐことによって法人税負担を軽減することは、企業が安定して存続するために必要な配慮であると考えることができるでしょう。しかし繰越欠損金に頼ってばかりでは、成長を阻害することにつながりかねません。 平成28年度税制改正は、成長志向に重点を置くことで繰越欠損金に頼る安定志向から脱却し、日本企業の成長を促すことを目論んだ27年度税制改正を見直した内容となっています。事実上増税となるこの改正に対して、企業の戦略的な租税対策は今後ますます重要となってくるでしょう。
【繰越欠損金に関する基礎知識】
○そもそも繰越欠損金とは何か
欠損金とは、財務会計上の赤字のことを言います。税法上は赤字ではなく欠損金と呼びます。税務会計では、収益を益金、費用を損金と呼びます。つまり、欠損金とは収益以上に費用が計上されている赤字の状態のことです。 この欠損金を繰り越した状態のものを繰越欠損金と呼びます。正しくは欠損金の繰越控除といいます。つまり、赤字を繰り越すことによって、繰り越した赤字と税額計算の基礎となる黒字部分を打ち消すことができます。これが欠損金の繰越控除です。
【繰越欠損金の適用範囲】
欠損金の繰越制度は、税負担を軽減するための例外措置ですが、青色申告法人だけの特典でもあります。繰越欠損金を利用するためには、法人税に関する青色申告の承認申請書を税務署へ申請する必要があります。青色申告法人は、原則として申請すればどの法人も承認されることとなります。
○繰越欠損金の法改正について
平成28年度税制改正の大綱の概要として、欠損金の繰越控除が見直されています。平成27年税制改正以前では、
・資本金1億円以下の中小法人は生じた赤字全てを繰越欠損金とする
・それ以外の大法人は全額ではなく80%に相当する金額を繰越欠損金とする
とされています。しかし平成27年税制改正を経て平成28年税制改正によって大法人の限度額が80%が、
・平成27年4月1日~平成28年3月31日開始事業年度では 65%
・平成28年4月1日~平成29年3月31日開始事業年度では 60%
・平成29年4月1日~平成30年3月31日開始事業年度では 55%
・平成30年4月1日以降開始事業年度では 50%
と段階的に縮小する見通しになっています。資本金が1億円以下の中小法人はこれまで通り、生じた損金の全てを繰り越すことができますが、繰越欠損金に依存している大法人は、今後の縮小を見据えた対策が必要になってくることが考えられます。
【欠損金の繰越期間】
ここまでお読みいただいた欠損金についてですが、いったいいつの分の欠損金がいつまで繰り越すことができるのか見ていきたいと思います。 平成23年税制改正により平成20年4月1日以後に終了する事業年度により生じた欠損金について、改正以前には7年であった繰越期間が9年に延長されました。さらに28年税制改正により平成30年4月1日以後に開始する事業年度においては繰り越し期間を10年とすることとなりました。 上記の改正により、繰越欠損金の活用には徐々に制限がかかり、企業側としては活用できる前に切り捨てになってしまうというリスクが高まることも考えられます。繰越欠損金の活用にあたっては長期的な活用を行う視点が求められるでしょう。
丸山 和敏
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