節税対策 - 2016-11-07

今年の税務調査の特徴

Posted by 川庄 康夫
Yasuo Kawasho

1.税務調査の季節

税務署職員の異動は毎年7月10日にあり、この異動から年内12月末までが税務調査の最盛期になります。

 

私ども川庄公認会計士事務所においてもクライアントの数が多く、また相続税の申告も毎年10件程ありますので法人税、所得税、相続税等含めた税務調査には年間20件~25件程立会っています。

 

税務調査には所長のわたくしと担当者の2名で立会います。30年以上にわたって税務調査に立会ってきましたので、例えば調査官が調査目的を明確に掴んできているのか?過去の調査事績を調べて来ているのか?年次比較をして大きく増減している勘定科目はないか?新しく発生した科目はないか?などから類推してこの税務調査官は何を調べようとしているかが税務調査初日の午前中の対応でわかるようになりました。

 

我国は実調率(納税者数に対しての調査割合)が低下傾向にありますので、国税庁からは実調率を上げるようにとの指示が各国税局(福岡国税局含む)を経由して管内の各税務署へ出されます。各税務署において法人税、個人課税、資産税の部門に割り当てられ各担当者が調査先件数のノルマと金額の目標を必達として税務調査対象先の選定が行われます。

 

平成28年7月から10月まで3カ月間において川庄公認会計事務所での税務調査立会件数は相続税1件、所得税4件、法人税2件の7件です。このペースで税務調査があると今期は20件超の税務調査を受けることになるでしょう。今年立会った7件の税務調査から今年の傾向を分析します。

 

2.取れるところから取る

どの税目の税務調査もやり方は同じです。初日の午前中は納税者の業務の全体像や概略を把握することに努めます。ホームページを見て仕事内容や料金等を入手し、会社パンフレット、組織図、社員一覧表の提示を要求しますが組織図がある会社は少数です。あるものは提示しますが、ないものは提示しなくて構いません。必要であれば調査官が作成するはずですが今まで作成した人はいません。

 

調査官は立場上性善説で考える人は皆無で、ほとんど性悪説の考え方で物事を判断するのでそれを前提とした対応が求められます。

 

今は昔と違って収入を除外する納税者は滅多にいません。そのため法人税、所得税の税務調査では消費税に関する処理を重点的に調べますし、経費項目の事業関連性を調べます。

 

よく問題になる経費科目としては交際費、旅費交通費、福利厚生費、消耗品費、雑費等があります。個人的支出として明確なものは前もって前もって納税者が経費から外していますし、事務所でもチェックしていますので問題になることはあまりないのですが調査官によっては交際費、旅費交通費、消耗品費等で事前に自己否認している場合「それ以外にもっと自己否認すべきものを再度検討して下さい」と言う人がいます。

 

「再検討しましたが自己否認すべきものはありません」と答えると調査官がそれらを否認することは不可能に近いのです。経費性を再検討して自己否認した場合、更にもっとあると言う調査官に対してこれ以上「ないものはない」と主張すれば、そこからさらにごり押しする調査官はいません。なぜなら彼らはそれを立証することは困難ですから。

 

税務調査で重加算税(35%~40%で納税者が税額計算の基礎となる金額を隠蔽、仮装した時に課される罰金)を課することができた場合にはその調査官の成績が上がると言われています。

 

そのためそれらしきものを発見した場合、「質問応答記録書」とした書面を調査官がパソコンで作成し、印刷したものを納税者に見せ「この内容に間違いありません」と日付署名押印させて重加算税を既成事実化する手法を取る場合があります。

 

重加算税は納税者が故意に何かを隠したり偽装したりという事実がある場合に課されます。納税者が納得いかなければ何度もその文章を修正させることも可能です。表現が間違っている場合には「法律的根拠がない」と拒否することもできます。

 

川庄会計グループ 代表 公認会計士 川庄 康夫

Posted by Yasuo Kawasho
代表取締役 川庄 康夫

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