さて、皆様は「給与」と「報酬」の違いをご存知でしょうか。まず報酬とは、「労働や物の使用などに対する対価としての金銭や物品」をいいます。一方、給与は「雇用契約を結んでいること」を前提として、その働いた対価に対して金銭を受け取ることいいます。したがって、雇用契約のない個人事業主や法人相手に支払うときは「報酬」という扱いになります。
① 所得の種類
給与は「給与所得」となり、報酬は「事業所得」にあたります。それぞれ計算の仕方は異なり、給与所得は「給与の金額-給与所得控除」、事業所得は「総収入金額-必要経費」によって求めます。このように所得税の計算に相違が出てきます。
② 源泉徴収
給与は国税庁から公表される源泉徴収税額表に当てはめて税額を求めます。一方報酬の源泉徴収に関しては、以下の通りです。
100万円以下の場合 「支払金額×10.21%」
100万円超の場合 「支払金額-100万円×20.42%+102,100円
※その他、個別の報酬によって控除額の計算式が異なるものもあるので、詳細は国税庁HPでご確認ください。
③ 消費税
給与は不課税仕入れなのに対し、外注費などの報酬は課税仕入れとして扱われるため、控除対象仕入税額に含められます。
以上のように、給与と報酬の区分によって税務上の取扱いが大いに違ってきます。
労働の対価としての支払いが給与か報酬かについての判例は多く、その中のひとつ紹介いたします。
・ホステスに対する支払いが給与所得裁判事例(平成28年7月28日地裁・平成29年1月11日高裁判決)
下記の理由からホステスに対する支払いは、給与所得として認定されました。
① 指揮命令を受けていた
イ ホステスの出勤日は、従業員やホステスらとの間で調整して決定しており、各自が自由に決めることができなかった。
ロ 始業前に朝礼への参加が義務付けられ、業務開始の準備、接客方法や接客態度等に関する詳細な決まりがあり、業務上の指導が行われていた。
② 時間的な拘束を受けていた。
出勤時間及び退勤時間は決まっており、休むことができる日数には制限がある等、ホステスが自由に決めることができなかった。
③ その他
ホステスは、衣装代や美容代等をすべて自ら自費で負担しているが、そのことから、直ちに事業所得にあたるとはいえないとされ、自己の計算と危険において独立して業務を営んでいることが根拠づけられるものではないとされた。
現在、雇用形態が複雑になってきた社会で、「給与」と「報酬」の分別に関する判例を、私たち税務の専門家としても今後注視していかなければいけません。年末調整や確定申告にも影響が及びますので、もう一度ご自身の収入が給与あるいは報酬なのか検討されてみてはいかがでしょうか。
不明点等ございましたら、ぜひ川庄公認会計士事務所までお越しください。
川庄公認会計士事務所 嶋村
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