今回は、廃業した場合の消費税の留意点をご説明したいと思います。日頃から扱う処理ではないので、よく注意する必要があります。
消費税を課税するためは、資産の譲渡や貸付け、または役務の提供に「対価性がある」ことが必要だとされています。
具体例を挙げて考えてみます。個人商店主Aさんが、店頭に置いているジュースを消費者Bさんに対して100円で販売としましょう。ここでは消費税が8円課税されます。いつもの話ですね。
ここでは、ジュースを譲渡する代わりに、100円というお金が渡されていますから、ジュースの販売(すなわち、資産の譲渡)には100円という「対価性がある」ということになります。
それでは、上記のジュースを無料でもらった場合はどうでしょうか?「対価性がある」と言えるでしょうか?
答えは、当然、「対価性がある」とは言えません。個人商店主Aさんはジュースという資産を譲渡していますが、その代わりに何かを得ているわけではないからです。そのため、このジュースを無料であげるという行為に対して、消費税は課されないということになります。
「対価性がある」場合にしか課税しない。これが消費税の原則です。しかし、この原則には例外があります。消費税法4条4項には次のように書いてあります。
「個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合における当該消費又は使用」は、事業として「対価を得て」行われた資産の譲渡とみなす。
通達では、個人事業者が廃業した場合は、この規定を適用するとしています。事業を廃止したら、残った棚卸資産等の事業用資産は家事のために消費するか、使用する他ないのだから、上記のみなし規定を適用するという考え方でしょうか。
廃業となると、身辺整理のために事業用資産を売却するか除却するケースが多いかもしれません。ところが、事業用資産を保有したまま廃業すると上記の規定が適用される可能性がありますので、ご留意ください。
川庄会計グループ 川庄公認会計士事務所 谷川敏明
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