相続・事業承継コラム - 2016-10-29

相続の現場から

Posted by 川庄 康夫
Yasuo Kawasho

1.相続人の関係

父親は勤務していた会社の近所に少し広めの土地を購入し自宅を新築しました。子供は長男Aと長女B、二女C、三女Dの4人です。

 

中学校の先生となった長男Aは同じく中学校の先生で共働きの妻(A′)との間に1男(A″)が生まれ、父親所有の土地に自分名義の自宅を新築しました。

 

長女B、二女Cは隣の県に嫁ぎ三女Dは遠方に嫁いだため実家とは疎遠になっていました。

 

2.1次相続

父親は定年後に他界しました。この時、遺言書はなく長男Aが財産分与を主導し、父親の所有する全ての財産を母親が相続することで決着しました。

 

相続によって兄弟間で揉めないように、母親に全ての財産を相続しました。母親が財産を持っていることで兄弟は母親を大切にするとの思いもありました。

 

子の相続では相続財産が相続税の基礎控除(1億=5,000万円+1,000万円×相続人5人)以下であったため相続税はかかりませんでした。

 

相続財産である不動産と預貯金を母親名義にするためには遺産分割協議書を作成して手続きをする必要があります。

 

母親以外の相続人A、B、C、Dは相続を放棄し父親の全ての財産を母親が取得するように遺産分割協議書を作成し不動産の登記と銀行預金の名義変更を行い全ての財産を母親名義としました。このときは遺産分割のトラブルはなく円満に相続を終了しました。

 

その後、長男Aは病気で亡くなりましたがAの妻(A′)は学校の先生を続けながら子(A″)を育てていました。長女B二女C三女Dも子供に恵まれそれぞれ平穏に暮らしていました。

 

3.2次相続

数年後、母親が他界します。父親の相続を取り仕切った長男(A)も他界しているため、この時の相続人はAの子A″とB、C、Dの4人です。この時A″はまだ中学生ですので遺産分割の話し合いにはAの妻(A′)が子A″の代理人といて参加しました。

 

この話し合いに立ち会った私は「A″がまだ中学生だからA″に少し多く残してはどうですか」との参考意見を述べました。

 

それぞれが家庭に帰り、それぞれの家庭で話し合いがもたれるたびに権利の主張が激しくなってきました。あくまでも平等に分けるべきだとの主張です。

 

「不動産をこのまま平等に分けることはできませんよ」と説明するのですが何も聞いてはくれない状況になっていました。

 

土地建物の評価額は大きな価額ではありませんでした。妻A′が自身の親から1,500万円は借入ができそうであるとのことでしたので私は代償分割を提案しました。

 

つまり、A″が居住している不動産をA″が全部もらうかわりにB、C、Dそれぞれに500万円ずつ支払う提案をしたのです。

 

この提案にB、C、Dは当初納得してくれたのですが、そのうちB、C、Dのうち誰かが言い始めました。「1,500万円出すと言ったけど本当はもっと出せるのではないか。」「退職金の前借をすればいい。」などと主張したのです。

 

公務員が退職金の前借などできません。妻A′はB、C、Dに用意できないことを伝えると今度は1人700万円と具体的な数字の提案がありました。

 

妻A′は両親に頼みお金をかき集めて「2,100万円用意し支払います」と連絡しました。すると「もっと出せるのではないか」と言い出しました。しかし今度は妻A′の両親が「そんな人達には出せない」と返事をしたことで裁判が始まりました。

 

結果1年超かかった裁判で土地を分割することになりました。B、C、Dはその土地を売却し1人約700万円の売却代金を手にしました。

 

B、C、Dは「ほら、こちらの方が多かった」と言っていましたが翌年に不動産売却の確定申告をすることになり1人あたり139万円の納税が発生したため手取りは570万円。また健康保険料もアップしてしまいました。

 

1年超にわたる裁判費用も持ち出しになります。当初の代償分割の金額500万円で合意していれば兄弟間も良好な関係を続けることができたでしょうし、代償分割700万円での合意であれば手取り金額はもっと多かったのにと、後で悔やんでも仕方ありません。

 

川庄会計グループ 代表 公認会計士 川庄康夫

Posted by Yasuo Kawasho
代表取締役 川庄 康夫

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