お客様の声 - 2022-09-02

改正年金法「老齢年金の繰り下げ受給」のリスクについて

年金制度改正法により、令和44月より老齢年金の繰り下げ受給の年齢が上限70歳から75歳に引き上げられました。令和4331日時点で、70歳に達していない方又は受給権を取得した日から5年経過していない方が対象となります。本改正は、少子高齢化による現役世代の減少や現役世代に対する社会保障費負担の増大、健康寿命が延びたこと等、就労に関する価値観の多様化が制度改正の背景にあります。

今回の老齢年金の繰り下げ受給の改正では、受給開始年齢を65歳から最長75歳まで後ろ倒しすることで受給額を1.84倍まで増額させることができます(一月当たり0.7%増)。老齢基礎年金・老齢厚生年金とも対象となります。

ただし、受給額を増額することで以下の4つのリスクが考えられます。

 

     受給者の死亡

受給者が死亡する時期によっては受取総額が減少する可能性があります。例えば、受給を先送りにしている最中で68歳に受給者が死亡した場合、65歳から3年間受け取れるはずだった老齢年金が、増額なしの金額で遺族に一括支給され、一時所得として課税されます。また、75歳から受給開始し、751ヶ月で受給者が死亡した場合には、1.84倍増額した年金額を受け取れるのは1ヶ月のみで、65歳から受け取れていたはずの年金5年分は時効となり受け取れなくなります。また、繰り下げ受給には、受給総額が一番大きくなる時期があり、受給開始70歳だと81歳、75歳だと86歳と厚生省が公表しています。現在の平均寿命が男性81.47歳、女性87.57歳と考えると、男性は長生きしないと繰り下げ受給のメリットは受けることができない可能性があります。

     税金

老齢年金は所得税の課税対象であり、雑所得として課税されます。雑所得は給与所得や不動産所得と合算して課税されるため、年金収入が増えれば、所得税や住民税、社会保険料などが増加します。

     加給年金・特別加算が受け取れない。

加給年金は、厚生年金を20年以上加入していた方が65歳になった際に、65歳未満の配偶者や子を扶養にしている場合は、一人当たり223,800円(3人目以降の子は74,600円)が加算支給されます。例えば、夫が65歳で妻が63歳であれば受給できますが、受給開始年齢を先送りにし、妻が65歳を超えていると、受給権はなくなります。それに伴い特別加算もなくなることとなります。

     在職老齢年金

在職老齢年金は、老齢厚生年金月額換算金額と、給与の月額相当額の合計額が47万を超えると、超えた分の2分の1の額が厚生年金額から減らされるものです。受給を遅らせて年金額を増やしても報酬が多ければ、トータルでみると年金額が減る可能性もあります。

 

 このように、今回の老齢年金の繰り下げ受給の改正については、様々なリスクがあるため、できれば65歳までに老齢年金の受給プランを練っておく必要があると思います。例えば、在職老齢年金について給与での支給ではなく、個人事業主として事業収入で収入を得ていれば、上記47万上限の制限はないので厚生年金額からの減額を抑えることができます。今後年金受給者は増えていくので、人生の設計プランを組み立てておくことをおすすめします。

 

 

 

川庄公認会計士事務所

嶋村

 


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